物理教育54-1

研究報告

●考え,つくり,試す実験教室

海老崎 功…1

  「ワンパク発明教室(富山県・(社)発明協会富山県支部主催)」という実験教室がある。これは本年で第25回目を迎えるという歴史のあるものであり,おもに小学校高学年を対象に発明・発見の要素を含む実験教室という内容で行われている。時間は途中昼食を入れて5時間という小学生にとってはひじょうに長いものであるが,その分,子どもたちにじっくり考えさせ,試行錯誤させながら物づくりをさせられるというメリットがある。その展開例と子どもたちの反応などを報告する。

 

●イオンが受けるローレンツ力を見る新しい実験手法の開発

柴田 恭幸・大山 光晴…5

 静磁場中に置かれた硝酸銀水溶液に金属粉を入れると,外からの電流供給無しに溶液が回転運動をおこなう。この現象をいろいろな条件で調べ,運動の基本的な条件を明らかにした。さらに,硝酸銀水溶液に塩化ナトリウムを入れると同様な回転運動をおこなうこと,金属粉の場合より長時間運動することを見いだした。このような電解溶液の運動を見る実験は,準備がきわめて簡単で,イオンに働くローレンツ力を観察する実験のひとつとして,様々な教育現場での活用が可能である。

キーワード 化学反応,ローレンツ力,電解溶液,回転運動,イオンの運動

 

私の工夫

●物体の浮上を題材にした力の演示実験

相川 文弘・鈴木  進・大沼  甫…10

 

ワンポイント

●シャープペンの芯の磁性

石井登志夫…12

 

●変数省略にご用心

新田 英雄…13

 

企画 SSHの現場から

SSHにおける流体分野の授業実践

長谷川 大和・小佐野 隆治・門田 和雄…14

 文部科学省スーパーサイエンスハイスクール研究開発において,科目「科学技術」を開発した。本科目は,理科と工業科とを連携させ,工業科の教員と理科の教員等によるティームティーチング体制をとり,理論と実験・実習とを結びつけた科目である。特に,機械科2年生には教科・工業における科目「原動機」をベースとした「科学技術(機械)」を実践した。そこでは年度の前半では,流体力学や流体機械といった流体分野に関する理論と実験・ものつくりを通した体験的な学習を行い,後半においては流体分野に関する探究活動を行った。

キーワード スーパーサイエンスハイスクール,流体,ティームティーチング,探究活動

 

海外の動向シリーズ

●科学的リテラシーを目指す英国の義務教育の改革

笠  潤平…19

 イギリス(イングランド)のナショナル・カリキュラムのキー・ステージ4(14歳16歳)の「科学」の規定が06年9月から大きく改編される。ダブル・アワード(2科目扱い)の「科学」は廃止され,代わって必修の「科学」(Science)および2種類の「追加科学」(Additional Science)が設置される。このうち必修の「科学」は国民の科学的リテラシー形成のための科目として構想されている。

キーワード イギリス,ナショナル・カリキュラム,GCSE試験,科学的リテラシー,評価,コースワーク

 

連載

●ノーベル賞受賞者たち(9)ボーアとデルブリュック

家治 隆之・西尾 成子…28

 

《北海道支部特集》

●はじめに

中野 善明 …33

 2005年を「世界物理年」と称しているが,それは100年前に若干26歳のAlbert Einsteinがブラウン運動の理論,光電効果の理論,および特殊相対性理論の偉大な三大論文の業績を記念したものである。この記念すべき年に第22回物理教育研究大会(北海道薬科大学,小樽市)と大会サテライトとしての世界物理年記念事業「科学者と語ろう!サイエンストーク2005」(北海道大学,札幌市)が開催されたことは北海道支部として大きな喜びである。その他に文部科学省科学研究助成費「公開シンポジウム青少年のための創造科学実験」の開催では,多数の中高生,一般市民を対象に行われた身近な理科実験と体験,最新科学の公開実験,特別講演などによって理科振興に寄与できた。更に,道内13ヶ所で開催された「青少年のための科学の祭典」では,各地域に住む児童・生徒達がこの祭典を通して「科学の楽しさ」,「面白さ」を体験し,かつ「何故」,「如何して」,「不思議だ」という「科学をする力」を培われたと思っている。

 支部会員は北海道各地で地域の特長を活かした研究や実践など様々な形で活動で繰り広げている。その中で本特集では,地域教育貢献としての実験教室の活動例を,科学の祭典では初めての試みである高校開催と地方都市での開催報告,そして高大連携の取り組みなどの代表的な例を報告する。

 

(実験教室)

●地域教育貢献としての理科実験デモンストレーション

長谷川 誠・石田 宏司…34

 千歳科学技術大学では,地域教育への協力・貢献活動として,地域の小中学生を対象とした理科実験デモンストレーションを実施している。小中学校の総合的な学習の時間の一環として実施する場合,市民活動に参加するかたちで実施する場合など具体的な実施形態は様々であるが,いずれの場合も,よりよい教育効果の実現を目標に地域社会との密接な協力関係に基づいた活動を目指している。最近数年間の活動概要を報告する。

キーワード 地域教育,理科実験,デモンストレーション,総合的な学習の時間,市民活動

 

●釧路における理科啓蒙と地域貢献活動

松崎 俊明・浦家 淳博・森  太郎…37

 物理・応用物理を担当する釧路高専教員が2004年度に行った理科啓蒙に関する学外活動の様子を報告する。

キーワード 地域貢献,理科教育

 

●周辺地域の小学生を対象とした実験教室の開催

伊藤新一郎…41

 青少年のための科学の祭典には毎年多くの子どもたちが訪れ,たくさんの実験・工作を通して,科学の楽しさ,面白さにふれている。その中には,科学の祭典のような一過性のイベントだけではなく,じっくりと実験をしてより深く学んでみたいと考える子供たちもいる。筆者は独立行政法人 科学技術振興機構の助成を受け,勤務する札幌西高校を会場に,11月〜3月の冬期間,地域の小学生を対象に実験教室を行っている。この取り組みについて報告する。

キーワード 実験教室,理科大好きコーディネーター

 

●科学教育ボランティアからの理科教育(NPO法人butukuraの活動について)

中司 展人…43

 NPO法人butukuraは,道内各地で開催される科学イベントへの参加や自ら主催するイベント等を通して,子どもたちの科学への興味・関心を高める活動に取り組んでいる。また,子どもたちが自宅で保護者と一緒に科学実験を楽しむことができるよう,Web Based Training(WBT)型オンライン科学工作・実験学習サイトを公開している。今後の課題は実験のバリエーションを広げることと,多様な分野の人材が入会しやすいよう工夫することなどがある。

キーワード 科学教育,ボランティア,NPO法人,科学イベント

 

(科学の祭典)

●高校での科学の祭典の開催

伊藤新一郎…46

 2005年11月19日(土),科学の祭典札幌大会の一会場として,筆者が勤務する札幌西高校を会場に科学の祭典が開催されました。ここでは,開催に至るまでの準備日程や,大会当日の様子,大会を通じて感じたことなどについて報告します。

キーワード 科学の祭典,ボランティア,体験学習

 

●青少年のための科学の祭典苫小牧大会

大坂 厚志…47

 平成17年8月19日(土曜日),苫小牧市科学センターにおいて,第1回めの青少年のための科学の祭典が行われた。北海道では,青少年のための科学の祭典が発展し,全道各地に拡大し,開催回数も増える傾向にある。そんな中,苫小牧市科学センターと北海道科学の祭典実行委員会で話し合い,平成17年度に第1回を開催する運びとなった。

 

●科学の祭典旭川大会とSPP事業との接点

萬木  貢…48

 2005年11月19日(土),科学の祭典札幌大会の一会場として,筆者が勤務する札幌西高校を会場に科学の祭典が開催されました。ここでは,開催に至るまでの準備日程や,大会当日の様子,大会を通じて感じたことなどについて報告します。

キーワード 科学の祭典,ボランティア,体験学習

 

(高大連携)

●進路探求学習としての高大連携教育

中道 洋友…51

 本校では2003年度より北海道工業大学との連携し,大学教員の指導による実験実習体験学習(連携プログラム)を実施している。5日間の日程のうち2日間はじっくり実験実習に取り組み,生徒が発表用資料での全体発表会も行っている。第一線の研究者による少人数ゼミ形式の指導は,高校の授業やオープンキャンパスでは得られない体験であり,生徒の進路選択に非常に有益であることが解った。

キーワード 連携プログラム,進路探求

 

●北海道函館東高等学校における高大連携の現状と課題

渡辺 儀輝…54

 現在様々な高校教育場面で行われている高大連携の現状について,勤務校である函館東高校の事例をもとに整理し,今後の発展の可能性について考察する。また現在注目されている,大学訪問・出前講義に代表される「受動型連携」から,生徒・教師と大学との共同研究に代表される「参加型連携」へのシフトや,大学非常勤講師としての大学リメディアル教育への高校からの協力など,新たな連携の方向性を,物理教育という視点から模索する。

キーワード 高大連携,リメディアル教育,単位互換

 

●札幌北高校におけるSSHと高大連携の展開

今野 博行…58

 札幌北高校は平成14年4月,科学技術教育に重点を置いた研究指定校制度の一つであるスーパーサイエンスハイスクール(SSH)に指定され,以後,高大連携を軸に研究開発を進めてきた。3年間の指定期間を終え,17年度は経過措置として1年間の継続指定を受けて活動している。これまでの活動と,SSHとして行った高大連携の取り組みを紹介する。

キーワード スーパーサイエンスハイスクール(SSH),高大連携,理数系教育,文系への理科教育

 

学会報告

●物理教育国際会議2005(インド)

増子  寛…62

 

Information…64